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古文辞学
関連概念 : 現日本 文学 儒教

江戸時代中期の古学派の儒学者荻生徂徠が創設した中国古典に関する復古的漢文学とその主義主張。

【成立背景】

徂徠の父方庵が館林侯綱吉の御側医であった関係から,12〜14歳のころ林鵞峰に入門し,方庵が上総国本納村へ流謫されてからは『四書大全』を読んだように,幼少年期に朱子学を勉学した。

父方庵が罪を許されて江戸に帰った1692年(元禄5)まで,徂徠は25歳まで独学で朱子学および中国古典漢文を身につけたが、その成果が徂徠の『訳文筌蹄』で,1696年に老中格の柳沢吉保に仕官した。

将軍徳川綱吉就任に寵用された吉保は,さかんに吉保邸に来訪する綱吉のために儒者の講席を設け,その役目を徂徠に命じた。
綱吉の「中華癖」に迎合して,吉保自身「華音」(中国語)に執心したが,徂徠もまた「華音」で講釈を命じられたのが1703年のころであった。

【古文辞学】

荻生徂徠のいう「古文辞」とは,「中国語としての古典漢文」を意味し,返り点・送り仮名の日本漢文を排斥し,中国音で発音し解釈するのが「華音」である。
「華話華音」すなわち「中国漢文および中国語による発音」は,徂徠の古文辞の学の主体となる。

1709年(宝永6),綱吉が死んで吉保は失脚し,徂徠は柳沢の藩邸を出て,江戸日本橋に私塾「ケン園」を開いてからも,中国語による中国古典研究,すなわち「古文辞」は続けられた。
長崎通詞の岡島冠山および「ケン園党人」らとともに始めた「訳社」という華話華音の研究会は,会員12名で、1711年(正徳1)から1724年(享保9)ころまで,約13年間続けられた。

【古文辞とは】

「古文辞」という語の内容は,荻生徂徠独特のものであるが,中国でも16世紀,明代中期に李攀龍・王世貞が古文辞を提唱し,秦・漢・唐への復古と「擬古文」が流行した。

徂徠が李・王らの古文辞に言及し,「徂徠自身の古文辞」の依拠をここに求めた主張は,1704年(宝永1)ころから始まる。
しかし,徂徠が中国明代の嘉靖七子のなかの李攀龍・王世貞の古文辞をわが国において継承することを明らかにし,徂徠およびその私塾「ケン園」の漢学を「古文辞」であることを宣言したのは,1716年(享保1)ころである。

これ以後,徂徠および「ケン園」の漢詩文は天下に盛名を馳せ,1728年(享保13),徂徠の没後も,「ケン園の古文辞」は,さらにいっそう世間的には隆盛をきわめた。

「古文辞」は「文学」であるが,古文辞の「文献学」を基礎として,徂徠の「復古学」という政治哲学もここから派生した。
将軍徳川吉宗就任に献じたといわれる『政談』『太平策』は、「古文辞」に支えられた「復古学」の成果である。

【古文辞学の内容】

荻生徂徠の古文辞学には師匠もなく,徂徠の独創であるが,柳沢吉保に仕官して「華話華音」で講釈する役目がその契機となった。

李・王の「古文辞学」は徂徠のそれの装飾にすぎず,徂徠自身あまり高く評価していない。
徂徠の古文辞学の唯一最大の敵は,中国宋代の「程朱学」すなわち朱子学であった。
中国11〜12世紀の「程朱学」は,朱熹によって集大成され,『大学章句』『中庸章句』『論語集注』『孟子集注』すなわち「朱子新注四書」を唯一の教本として「理気二元論」のような自然人文哲学体系を樹立した。

荻生徂徠の古文辞学は,これらを「朱熹らの主観である」として否定し,中国古典は,『詩経』『書経』『礼記』『楽記』『易経』『春秋』の「六経」を主とし,その後の『史記』など前漢までの文章を「古文辞」であると規定した。
孔子はこれらの中国古典を編集して後世に伝えたから,「孔子学」すなわち儒教は「六経」および「前漢の文章」までを対象とする。
詩においては、玄宗即位の盛唐詩までをよしとし,詩文そのものが,その時代の歴史と精神をそのまま表すものとした。

「六経」の時代には虞王朝の舜帝,夏王朝の禹王,殷王朝の湯王,周王朝の文王・武王・周公旦らの「先王」すなわち「聖人」が君臨した。
儒教は先王・聖人の時代の文学と政治を学習する学問であり教えであるから,先王の時代に近い前漢までの後王の時代の文章,盛唐までの後王の時代の詩以外は対象にならない。
古文辞の学は,詩と文章と政治と先王の人格が総合されて一体となっている「聖代の学習」であるとし、朱子学のように,後世の人が自分の思想や意見や哲学を展開し,「四書」のように経書を主観的に改廃すべきでないとした。

豊かな人間性と親しみある仁政は古文辞であり復古学でもある。

2003/12/18 masashi tanaka

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